そもそも「ジャムセッションって何?」
- Mojo Yamauchi
- 2016年9月11日
- 読了時間: 9分
先日、ある方と
「今度ジャムセッションイベントやりますんで、よかったら遊びに来てくださいねー!」 なんて話のやりとりをしていたのだけれど、その時気づいたのですよ。 そもそもジャムセッションに馴染みがない方にとっては、 「ジャムセッションっていったい何?」 ってことです。 恐らく音楽・楽器をやってる人でもセッションに馴染みがない人はいるでしょうし、そういう人は 「セッションって、行っても何やるのか、やれるのか、やらされるのか、わかんない」 って感じだと思います。 ましてや一般の音楽ファンの方々にしてみたら 「会場がライブハウスってことはライブをやるってことなの?」 ってことでセッションイベント自体に全くピンと来ない人も実は相当多いのではないかと。 ジャムセッション主催者としてこれは看過出来ない事態ですので、ここで改めて説明させていただきたいと思います。
世の中で行われているジャムセッションというもの自体にも実はタイプが色々あるのですが、どんなセッションでも共通しているのは、 『その日、その場に集まった人が、面識の有る無しに関わらず、いわば即席のバンドを組んで演奏する』 ということです。 昔からよく行われているセッションに「Bluesセッション」と「Jazzセッション」があります。 この2つは基本的に「スタンダード楽曲」を演奏します。 Bluesの場合どの曲もそのほとんどが「3コード進行、12小節で1コーラス形式」なので曲を知っていようがいまいがキーさえわかればなんとかなるという感じです。 一方Jazzの場合は曲によってコード進行が複雑な場合も多いですし、いくらスタンダードっていっても全部覚えてねぇよって話になるのでセッションの場合でもほぼ間違いなくスタンダードの譜面が用意されています。 さて、前述したように「面識有る無しに関わらずその日その場に集まった人」で「即席のバンド」は組めるのか? そこにはスリリングな面がありまして、例えばの話「ドラムしか来ない」「ベースしか来ない」「ギターしか来ない」といったことも意外とありうるんですね。 そこで「折角参加しようと思ってきたのにバンド形態の編成が組めないんじゃ演奏出来ないじゃん」という事態を回避するために『ホストバンド』がいるケースもあります。
ここまで、ごく一般的なセッションの形式を説明しました。
次に、私が主催している「Jazz/Funkセッション」についてお話しします。
便宜上「Jazz/Funk」とうたっていますが、実際のところジャンルは「なんでもあり」です。 私はBluesも好きですしJazzも好きですが、それだけに「Bluesしかやらない」「Jazzしかやらない」というのはちょっと不自由を感じます。 なのでBluesもやるしJazzもやる。SoulやR&Bは大好物。PopsもRockもLatinもReggaeもどんなフィーリングだって楽しくセッション出来るじゃん!っていうのが私の考え。 楽器プレイヤーの参加なくして成立しないので基本的にはインスト主体、そして多分に即興演奏の面が強いのでそういう意味で広義のJazz。さらにありとあらゆるリズムバリエーションを楽しめて、参加者が一丸となることによってグルーヴを紡ぎ出す(これが一番大事!)という意味でのFunk。 これが「Jazz/Funkセッション」とうたっている理由です。 さて、Jazz/Funk、あるいはSoul/Funkといったセッションでも今やスタンダードといってもいい定番楽曲というものがあります。それらにはインスト楽曲に限らず歌もの楽曲も含まれています。なのでそれらについてはある程度譜面も用意してあります。 そしてどんな楽器の方がいらしても、またたとえ参加パートに偏りがあったとしても必ず演奏していただけるように、私をリーダーとしたホストバンドがおります。で、ホストバンドによる「こんな感じでやりますよ」というデモ演奏もあります。
ここまでの説明だと「Jazz/Funkセッション」というのは単にジャンルの幅が広がったセッションという感じに思われるかもしれませんね。 「なんだ、結局曲知らないと参加出来ないのか」とか「譜面とか面倒くさいし」とか思いました?
私が主催するセッションで本当に啓蒙したいのは定番曲や既成曲を演奏することではないのです。 ではそれはどんなスタイルか。
本線として拡げたいスタイルとは知っている曲を皆さんと一緒に演奏することではなく、1コードでも2コードでも、あるいは3つ4つのコードを使ったループパターンでもいい、その場で曲をでっちあげて演奏すること、しかもあたかもそんな曲あったよね的なイメージを皆で共有しながら即興で。 即興であったって「曲」としてでっちあげるのです。 「曲」としてでっちあげるということは、セッションだからといっていきなり誰かのアドリブソロが炸裂するなんてことは許さないということです。いきなりソロから始まる楽曲なんて普通無いでしょ? アドリブはアドリブでも最初にやるべきは「テーマ・メロディー」を即興で提示することです。 曲として成立させる、またその後のソロ回しにおいても全員の意識の指針となるテーマ・メロディーが提示出来れば、そのセットはほぼ上手くいきます。 「あたかもそんな曲」としてイメージ出来るということは、演奏に参加している人だけでなく、客席でオーディエンスにまわっている人も楽しめるということです。 知っている曲を演奏するということは、ややもすると音をなぞるだけの生カラオケに陥りがちです。 対して即興であっても曲として仕上げるつもりで演奏するということは、ミュージシャンとしての矜持が問われるといいますか、その演奏に対していかに自分が音楽的に貢献出来るかということに向き合うことになります。 自分以外の周りの音を聴き、アンサンブル的にどういう演奏をすべきか、神経を研ぎ澄ますことになるからです。 それこそ合奏、セッションの醍醐味だと思います。 参加料払ってるんだから自分がやりたいようにやるわ!っていう独りよがりじゃ結果音楽は楽しめませんよね。
これについて、かつて私が携わっていた東京・西荻窪w.jazの常連さんであるツチダ師匠の言葉をお借りしてここにご紹介したいと思います。 ちなみに彼はこのスタンスで歌も即興でつける歌い手でもあります。
引用開始>>>>>>
自分にとっての理想の、こうあってほしい、既成曲をやらない=新しい曲を作る、wjaz セッション。 ------------------------------------------------------------------------- 1.誰か一人(スターター)が始める。
Dなら基本のビート、D以外なら+コード進行、基本のライン(ベースラインやGのリフ/カッテイング)を4or8小節、まわりは余計な音を出さずにちゃんと聞く。
2.聞きながら全員が、テンポやシャッフル感、所謂グルーヴをしっかり意識し、(音を出さずに)スターターに合わせる。
この時点で、不安定だったり無理っぽかったら、ちゃんとダメ出しする。 敢然と(しかし笑顔で)演奏をストップする。 躊躇すると地獄の10分間が待っている。 スターターが技術が低いと感じたら、へこませずに、うまいこと言って彼が一番得意なパターンでやらせる。 逆に、BPM240以上とか60以下とか8小節で転調3回とか、自分を含めてまわりがついていけなさそうだったら、正直に、できないよごめんね、と言う。 このとき、目は笑わずに「んなもん合わせられるか!一人でやれボケ!」と気持ちを込めて睨み付ける。 どうにもしっくりこなければ、スターターを変えましょう。
スターターの注意点 ・埋めすぎはダメ。音数の隙間を、他の楽器が入ってくることを意識して。 ・G/Kで他にも準フロントがいる場合は、音質・音域にも注意。 Kが左手で白玉弾いちゃうとか、Gのカッティングで太い音色で弦6本全部音出しちゃうとか、練れた方でも時折見かけます。 音域的に他の楽器が収まる隙間が無いので、単純な足し算になり、結果音量が上がり隣のバーのマスターが怒鳴り込んでくる。 OD踏んでE7(#9)を6弦から鳴らすのは、Gトリオ以外では法律で禁止されています。
3.全員が入って4or8小節、ひたすらグルーヴを合わせ、G/Kはバッキング時の自分の位置/役割を確定する。
ここでこのテイクの「かっこよさ」が8割決まる、と思います。 テーマとかソロとかいらん、このまま続けて!ってのを、年に何回かでいい、聞きたい/やりたいもんです。
4.フロントがテーマを出す。曲の全体像を全員が意識する。
フロント=テーマ出しの注意点 ・スタンダードみたいな素晴らしいメロディ、なんて簡単に出るわけはない。考え込まずにとにかく出す。 ・小節を跨いだ強いリフ、くらいでいい。つか、ファンク系ならそっちが本線。 ・ただし、たとえ1コードでも構成だけは強く意識する。16小節を4×4でAABAとかAABBとか、自分で決める。奇をてらわずに。 ・手癖指癖を恐れない。何かに似るのはしょうがない。似ても出ないより百倍良い。 ・なによりも大切で難しいのは、インプロ回しが終わってテーマに戻るときに、同じモノが弾けるかってことで。はいそうです、ごめんなさい。
5.インプロまわし。
もちろん、ご自由に。 ただし、多少はテーマを意識してほしい。 同じフレーズをなぞれ、という意味ではないです、意識のしかたは、人それぞれで。 敬意を払って、とでも言うべきかな。
6.テーマに戻って、エンディング
全員の緊張感が一気に高まる(笑) そこだけ全員が見つめあう、って絵をよく目にする。 もっと前から見つめ合ってくれ。
エンディングの注意点 ・リットは最後の手段、ってのはwjazの伝統ですが、実際には私の個人的なこだわりです(笑)リットが正しい場合も多い。 ・リット以外、エンディングのシンコペは、テーマから道かれるのが自然。 ・さもなきゃテーマからの最終インプロ、そのフレーズから自然に拾われたのが理想。 ・いずれにせよ、無から生み出されるものではない。耳をすまそう。
とにかく、一人でも終われない、終わる気が無い奴がいると、そのテイク台無しです。 曲は「終わるために始まる」くらいのつもりで。 また、ここで時折、4/8/16の感覚が無いプレーヤーが露見します。 彼の成長のために大事なことなので、客は笑いながら「そこかよー」「止まれよー」と突っ込んであげましょう。 ------------------------------------------------------------------------- 以上、多分に頭でっかちな部分は自覚してますが、自分的には楽しさを追っての結論です。
>>>>>>引用終了
まさに、こういうことなんです。
ジャムセッションというのは果し合いでもなければコンペティションでもありません。 そりゃ果し合い的に「アイツよりいいソロを弾いてやる」とかいう気持ちのバチバチはあってもいいと思うんですが、いざ自分が後ろに回ったら「アイツが気持ちよくソロを弾けるようにかっこいいバッキングしてやる、さあ、お手並み拝見」といった協調性がなきゃいけません。 また、自分が上手く出来ること出来ないこと、技術的な習熟度などは人それぞれで違うのは当たり前です。 自分はあんなに上手く弾けないから・・・とか比べられることを恐れて参加しないというのはナンセンスです。 であれば上手いと思う人のプレイを盗みましょうよ。 下手であってもちゃんと音楽しようとしている人のことを馬鹿にする人はいませんよ。 そりゃ人によってアドバイスの仕方はさまざまかもしれませんが、逆に「言われるうちが花」とも言えますから。 そうやって参加していただいている方々全員が音楽的にスキルアップしていけたらこれほど楽しいことはないじゃないですか。 私はそんな思いでセッションを主催しています。