"Giant Steps"を料理する
- Mojo
- 2015年4月16日
- 読了時間: 4分
【Giant-Funky-Steps】 arranged and played by Mojo Yamauchi
https://youtu.be/cj2uBRAafXc
original "Giant Steps" by John Coltrane
>https://www.youtube.com/watch?v=30FTr6G53VU
タイトルは「巨人の歩み」なんて訳されてたりするわけですが、この「ステップ」の意味するところは音程間隔のことです。
この曲の理論的な構造についてはすでに解析されているのだけれど、知らない人のためにざっとおさらい。
1オクターブを12分割すると出来るその1個ずつの音程間隔を「半音」といい、それが現在我々が慣れ親しんでいる平均律の音楽および楽器演奏・構造上の基本となっているわけですが、この半音程間隔での音の順列を「ハーフ・ステップ」と言い、ハーフ・ステップで並んだ音階を「クロマティック・スケール」なんていうわけです。
これが6分割だと当然ながら1個ずつの音程間隔は半音2個分になるわけで、これを「全音」と言い、その順列を「ホール・ステップ」、その並びの音階を「ホール・トーン・スケール」といいます。
同様に、半音3個分の間隔で区切ると4分割したことになり、この並びは「ディミニッシュ・スケール」といいます。
ここまで言うと勘の良い方ならおおよそ察しがついたんじゃないかと思いますが、では半音4個分=全音2個分ずつで区切ると、1オクターブは3分割されることになり、これをコルトレーンは「ジャイアント・ステップ」と称したわけですね。
この曲の構造からいくと、作成するスケール・オクターブの基準音は「E♭(ミ♭)」と考えられ、その次の全音2個分離れた音は「G(ソ)」、同様にその次は「B(シ)」、そしてオクターブ上の「E♭」に戻ることになります。
「Giant Steps」はこの「E♭」「G」「B」の3つがトニック(主音)となるコード(和音)として配置された楽曲(「マルチ・トニック」といわれる)なんですが、いわゆる通常のダイアトニック・コードの流れ(メジャースケール=ドレミファソラシドの音程間隔に準拠した自然なコードの流れ)とは合致しないわけです。
(例)「E♭」をトニックとしたダイアトニック・コードの場合
E♭→Fm→Gm→A♭→B♭→Cm→Ddim→E♭
どういう事かというと、E♭メジャーコードをトニックとしたコード進行を考えた場合に、自然な流れとしてはGメジャーコードもBメジャーコードも出てこないということです。
つまり「E♭」「G」「B」の3つのコードそれぞれどれからどのコードに移ろうともそれは即ち「転調」することになるわけです。
「Giant Steps」は1コーラス16小節で構成されていますが、その間だけで10回も転調するという異常な楽曲です。
>ジャイアント・ステップス(ウィキペディア)
>http://goo.gl/Kmq2wb
なのに聴いてる分には不思議と違和感がないんですよね。
コードの繋ぎにⅤ-ⅠやⅡ-Ⅴ-Ⅰといったドミナント・モーション(終止形の手法)が施されているとはいえ、不思議な浮遊感をもってコード進行が繋がっていき、結果めくるめく転調も何か自然に流れていってしまうという。。。
問題なのはこの「自然に流れていくように聴こえる」コード進行が、「とは言えやはり転調の嵐」であるということ。
これをじゃあ「自然に流れるようにフレーズを歌わせ、アドリブを取ることが出来るのか?」っていうのが大命題。
本家コルトレーンはコードトーンに準じたメジャー・ペンタのアルペジオ的な音使いでもってひたすら勢いで吹きまくるという手法を取っているようです。
何しろ原曲はbpm240の超高速4ビートだからそれもまあ、さもありなん。
そこで楽曲のスピード感は活かしつつコード・チェンジはもっと大きくという手法でアレンジしてみました。
そして如何に「Jazz的な文法」ではなく、自分が持っているBluesやRockの手法におけるフレージングを活かせるかに一番の主眼を置いてみたわけです。
具体的にはソロ時、Rock系ギタリストであれば誰もが慣れ親しんでいるであろういわゆる「マイナーペンタ」の基本ブロック型(6弦人差指がルートにくる例のヤツ)による運指フレーズでどうコード・チェンジと音の繋がりを捌くかが大きなテーマでした。
*考え様によっちゃあ、いわゆる「マイナー・コンバージョン」と「リディアン・クロマティック」の組み合わせ的な考え方とも言えなくもないけれど、ギタリストである自分的にはもっとシンプルに「一つのメジャースケールから合成されるマイナーペンタの運指ブロック型は3箇所ある」と考えた方が実は楽でした。
ちなみにソロ・パート、1・2コーラス部に関してはブルーノート処理的なアウト音はあっても、全体的にはさほどアウトしたフレーズは弾いていませんが、3コーラスめは出だし4小節いわゆるコンディミなアウト、つづく4小節はサックスプレーヤー的なメカニカルなアウトという感じでそこはJazz的な手法かもしれません。
最後8小節はメロディックなアプローチで〆てみました。
こうしてみると、オリジナルはJazzの難曲ではあるけれど、かなりPOPな感じになったんではないかと思います。
さて、これに取り組んで改めて思ったんですが・・・
いわゆるジャンルとして言われるJazzって、もはや「4ビート」であること以外に意味は無いんじゃないかなぁ。
私が料理したこの「Giant Steps」を聴いて、「これはJazzじゃない」って言う方は絶対いらっしゃると思うんだけれど、
じゃあJazzって何だよ?(苦笑)
恐らく即興演奏は大得意であったに違いないバッハ大先生やモーツァルトにこの和声進行を提示したらどんなラインをかましてくれるか、非常に興味があるなぁ。